晴明の陰陽道を継ぐ六家(「安倍成道とは」参照)では、3歳の時に『見極めの儀』が執り行われます。そこで過去の陰陽師が守護霊として憑いていた子どものみが、次の継承者として認められ、その時点から元服までの期間、厳しい修行を課せられることになります。
しかしそうした修行期間中に、1,080の術について学ぶことはありません。
苛酷な修行を課されるものの、それは術に耐えるために心身を鍛錬することが目的。
また陰陽道の理論体系については先達から学びますが、術の仕方を教わることはありません。
陰陽師の守護霊を憑けた継承者は、必要な時に必要な術の文言、印、身のこなしなどが、自然にイメージとして浮かんできます。
あたかも自分の名前が、自然に口をついて出てくるように。
安倍晴明の陰陽師を継承する六家は、各家がそれぞれ得意な術の分野をもっています。
たとえば火の家系であれば呪術、金の家系であれば錬金術(今でいう化学や医薬など)の分野というように。要人を守る役割を担う、私たち水の家系の得意な術は、「先読み」「除霊」「結界」「式神」です。
先を読んで災厄を避け、人や土地に災厄を及ぼす霊的な存在や呪(しゅ)を封じ、結界を張ることで負の力の侵入を阻む──。そうしたことで要人を守護することが、私たち水の家系の使命なのです。